Title / 靄 – Haze
Stretch film / 4750mm(W)×200mm(D)×3100mm(H)
グループ展 「 ここ と そこ 」
作家: 松岡亮、アキレス・ハッジス、biki、中島崇
特殊照明作家: 市川平 2017.6/24 移動式光源のコラボレーション
キュレーター: タムラマサミチ
◇会 期:2017年06月17(土)~07/01(土)
◇会 場:東京スタデオ・Komagome1-14cas
この度、Komagome 1-14 casでは松岡亮、アキレス・ハッジス、biki、中島崇の四名による
グループ展『ここ と そこ』を開催します。
本展は、5月27日の東京国際フランス学園の創設50周年記念祭のため一日のみ行われた『Invitations to Space』展を再構成したものとなります。この展示は上記の四名に、常設となる作品を設置したサム・ストッカーを加え、計五名のアーティストが校内各所にインスタレーションを展示し、それぞれ異なる性質を有した空間へと来場者を誘うものでした。
本展『ここ と そこ』は、『Invitations to Space』展で一日限りの展示を行った四名の作家の作品をギャラリーという別の環境において新たに展開するものです。
中島崇(なかじま・たかし)は大規模なインスタレーションを数多く手がけており、その場に立ち会った人々の間で多角的に共有されるひとつの空間体験を通じて有機的な関係性を創出します。透過性の素材や十分な間隙を用いて外光を効果的に取り込んだ作品は、床や壁などに透過した光や作品の影を作り出すことで、作品の存在する空間と周辺に広がる環境を双方向的に結び付けています。作家性を強く主張しない中島のアプローチは環境的・建築的にも見えますが、その背後には作家自身の絵画的な想像力が隠されており、それは表面的な装飾ではなく没入的な体験として巧みに空間化されています。
松岡亮(まつおか・あきら)は役割を終えたテクノロジーを再利用した音楽・音響作品を制作しており、近年ではとりわけアナログ映像信号の停波により完全に役目を終えたアナログテレビによるインスタレーション制作とライブ演奏を行っています。テレビは情報社会のシンボルや歴史的なモニュメントとして用いられることも多い素材ですが、松岡は抽象的な光と音の発生源としてのアナログテレビに着目します。読解されるべき情報を発さないまま駆動し続けるテレビは、モニターの内側に意識を誘導するのではなく、その外側に時間的・空間的な作用を生み出します。
アキレス・ハッジスは平面や立体から即興演奏に至る幅広い表現形式を駆使し、事物が明確な形態や意味に固定されてしまうよりも前の段階の多元的で不定形な現象を作品として提示します。画面に大きく空間を残す東洋的な素描から大規模な音響装置まで多岐にわたるハッジスの作品は散逸的にも見えますが、これらの活動のすべては、思考と行為が未分化なまま進行するプロセスを広義の「ドローイング」として捉え、そのロジックを様々なメディアに展開するという一貫した試みから生まれています。その試みの空間的な展開として、ハッジスの近年の活動はインタラクティブなインスタレーションに向かっています。
bikiはフィルムや風船などを用いて物理現象を発生させるパフォーマンスを行っており、膨らむ、縮む、近づく、遠ざかる、触れる、離れる、張る、緩む、現れる、消える、などといった事象の連続へと観客と空間を巻き込みます。中でも扇風機からの送風で膨らませたフィルムを継ぎ足しつつ拡張していく作品は、時として観客ごと空間をすべて包み込むような規模にまで展開します。bikiは、個人的な詩情や物語性、あるいは社会的な記号性や象徴性を作品から徹底して排除しています。認識の手前の現実世界に直接働きかけるbikiの作品は、非言語的な領域で作動し、空間や身体についての感覚を意識の外部から揺るがします。
本展『ここ と そこ』は、それぞれ別のアプローチから場に働きかけるこの四名の作品をひとつの空間に集めます。それらの作品同士の相互干渉の中で転換を続ける、「ここ」という主観性、「そこ」という対象性、そして、それらを結ぶ「と」という関係性の三つの要素から立ち上がる空間をどうぞお楽しみください。
テキスト/タムラマサミチ